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みんなの肝臓
ウイルス性肝炎にはどんなものがあるの?

A型肝炎

A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)の経口感染によって発症する肝炎です。アフリカ、東南アジア、中南米、など熱帯、亜熱帯の国々がA型肝炎の高浸淫地域です。これらの国では幼小児期に顕性感染または不顕性感染を受け、青年期に至るまでに抗体ができる場合が多いようです。我が国では冬から春にかけて(3~4月がピーク)牡蠣などの魚介類の生食による感染が多く、2~6週の潜伏期を経て、突然の腹痛、黄疸、全身の倦怠感、食欲不振、悪心嘔吐が起こります。2~3ヶ月後に肝障害は正常に戻り、慢性化することはありません。

B型肝炎

本邦ではHBVキャリア(キャリア:ウィルスを保有している人をキャリアと呼びます)は約150万人と云われています。1986年にB型肝炎母子感染防止事業が開始し、新規のHBVキャリアは年間300~400人程度で、事業開始以前の1/10に減少しました。B型肝炎は出産時の母子感染(垂直感染)、刺青、性交渉などにより血液を介して感染します。以前は輸血による感染が多かったのですが、最近は少なくなりました。

HBVにはA,B,C,D,E,F,G,Hの8遺伝子型があり、本邦ではC型がほとんどで、初感染で慢性化しませんが、垂直感染率と発がん率が高く、抗ウイルス療法があまり効かないという特徴があります。潜伏期は1~6ヶ月です。急性期には黄疸、全身の倦怠感、食欲不振、悪心嘔吐の症状があります。多くは一過性ですが、中には慢性化する場合や一部(0.4~1%)には激症化することがあります。母子感染の場合はHBe抗原陽性の無症候性キャリアの状態が続き、思春期から青年期にかけて急性肝炎を発症することがあります。なかには気付かずに過ごす人もいます。その後再び無症候性キャリアを経て慢性肝炎へ移行することが多くみられます。

図中の数値は参考値として記載しています。

B型肝炎は一度感染するとHBVは生涯に亘って産生され続けることが判ってきました。無症候性キャリアが免疫抑制剤や抗がん剤、副腎皮質ホルモンの全身性投与を受け、からだの抵抗力が落ちると、潜在していたHBVが増殖をはじめ、急性肝炎を引き起こし、激症化する症例が増えています。このような肝炎を「de novo B型急性肝炎」と呼んでいます。

C型肝炎

C型肝炎の感染者は世界で1億1千万人、日本では約200万人と言われています。

1989年に米国のカイロン社がHCVを発見するまでは、非A非B型肝炎と呼ばれていた肝炎の大部分を占めていました。HCVは血液を介して感染し、多くは慢性肝炎へ移行します。血液製剤による感染は激減しましたので、C型急性肝炎の初感染者は極めて少なくなりましたが、高齢化とともに高齢者の慢性C型肝炎が増加傾向にあります。また未だに多くのウイルスキャリアがいて治療の対象になっています。

HCVはRNAウイルスで、6種の遺伝子型に分類されています。日本では主に1b型、ついで2aと2bが多くみられます。遺伝子型1bはインターフェロンに対して抵抗性が強く、2aはインターフェロンが効きやすい遺伝子型です。

<表4>C型肝炎ウイルスの遺伝子型
セロタイプ 遺伝子型 日本での頻度
グループ1 1a 日本では稀
1b 約70%
グループ2 2a 約20%
2b 約10%

C型慢性肝炎を放置すると、何割かは何年後かに肝硬変へ移行し、さらに肝細胞がんを発生する場合が少なくありません。肝炎が長く継続すると肝細胞が死んだりするため、肝臓内に白血球やマクロファージが増加します。とくに炎症巣にいるクッパー細胞マクロファージが盛んに化学物質を放出し、その刺激を受けて肝星細胞が活性化し、線維を大量に産生し、肝硬変へ移行します(肝硬変の項参照)。

図中の数値は参考値として記載しています。

D型肝炎

D型肝炎ウイルス(HDV)はB型肝炎ウイルス(HBV)の助けを借りて増殖する肝炎ウイルスです。HBVよりも強い感染力を持っています。感染ルートはHBVと同様に輸血、性交渉、母児感染です。我が国ではD型肝炎の感染者は稀で、HBs陽性者の1%未満です。症状は他の急性肝炎と同様です。

E型肝炎

E型肝炎ウイルス(HEV)は、5番目の肝炎ウイルス(アルファベットの5番目の‘E’)あるいは、糞便から経口的に感染するので、'enterically transmitted(経腸感染)’の‘E’から‘E型肝炎ウイルス’と命名されました。 HEVは肝臓内で増殖し、血中に放出されると同時に、胆汁から腸管を経て糞便とともに体外へ排出されるので、糞便に汚染された飲料水から感染することが多いようです。上下水道が完備していないアジア、アフリカ、中南米などで、河川が氾濫したあとに感染が多くみられます。1995年インドのニューデリーで飲料水の汚染から約3万人の黄疸患者が発生しました。これがE型肝炎の最初の報告です。大規模な水系感染がその後もインド、ネパール、ミャンマー、中国、メキシコなどで発生しています。このような土地に旅行して生水や加熱調理されていない食べ物を食べて感染し、帰国後に発症する「輸入感染症」が以前から知られていました。E型肝炎は重症化しやすく死亡率は1~2%です。

E型肝炎は感染後20~50日の潜伏期を経て、A型肝炎と同様な症状、黄疸を伴った発熱、全身倦怠、食欲不振を訴えます。それが12~15日継続した後、約1カ月ほどで臨床的に治癒し、慢性化することはありません。HEVの多くは不顕性で、肝炎を発症するのは0.1% 以下と言われています。しかし稀に重症化することがありますので注意が必要です。

我が国でもE型肝炎が増加傾向にあります。野生イノシシやシカの肉や内臓を生食や加熱不十分のまま食べて感染した例が相次いで見られるようになりました。さらに最近の調査では、家畜の豚等からもウイルスが見つかったという報告があります。E型肝炎はそのために「人畜共通感染症」と言われています。これまで原因不明と考えられてきた急性肝炎は、実はE型肝炎であった場合が多いようです。

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